異なる職種によるデザイン・コラボレーションを提唱する建築家
土木や建築、造園に都市計画、さらにインダストリアルデザイン(工業デザイン、工業意匠)等異なる職域をデザイン・コラボレーションすることを提唱している日本の建築家、内藤廣氏は数々の賞を受賞し、様々な美しい建築物を作り出してきました。
海の博物館は彼の代表作といえる周辺地域の漁村風景を活かした意匠となっており、現代建築であるのに古くからそこにたたずんでいたと思わせるような建築物が非常に印象的です。
周囲の環境やその建築物によってその人を想像させる建築物作りが非常にうまい建築家で、安曇野ちひろ美術館などは長野県北安曇野郡松川村という美しい自然の中に溶け込む美術館、またこの美術館が絵本作家という素敵な物語を作る方の美術館であるということが如実にわかる作品となっています。
周囲の風景を邪魔しない、それがまた建築物の味になるような作りはその他の作品にも強くいかされており、茨城県天心記念五浦美術館などは、海の景勝地であるこの地域の海岸線と見事に屋がつながる造りとなり、内藤廣という建築家の能力、技能は一体どこから生まれるのか?と考えてしまうほど素晴らしい建築物です。
十日町情報館は外から見るとそれほど大きな建物に見えませんが、中に入ると「あれ?こんなに広さがあった?」と思うくらいに空間を見事に作り出しています。
沢山の情報物があるのに狭さを感じず、逆に圧倒的な迫力となっているという不思議な建築物です。
内藤廣氏の略歴、受賞等は?
内藤廣氏は神奈川県横浜市に生まれ神奈川県立湘南高等学校から早稲田大学理工学部建築学科卒業、さらに早稲田大学大学院理工学研究科建設工学を専攻しここで吉阪隆正氏に師事されました。
1976年にはスペインのフェルナンド・イゲーラス建築設計事務所に勤務しその腕を磨き、菊竹清順建築設計事務所に勤務、1981年内藤廣設計事務所を設立されました。
東京大学工学部土木工学部助教授、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻教授、東京大学副学長などを務め2011年に東京大学を退官、東京大学名誉教授となっています。
2005年にはGSデザイン会議を篠原修氏らと発足しこの代表となっています。2003年いは織部賞を受賞し、現在は各コンペティションの審査員、審査委員長などを歴任するなど、多数の建築家を輩出するという役割も担っている方です。
沢山の作品を手掛けてきた内藤廣氏は、常にその作品が地域環境、周囲環境になじんだもの、その建築物の意味を感じさせる作品等を創り上げてきました。
想像性にあふれる彼の作品は、これから建築業界を担っていく多くの若者の指針となる建造物だと感じますし、これからさらに美しい建築物を創り上げてくれると感じさせます。