アンコール遺跡群はカンボジアの北部、タイやベトナムに近いシェムリアップという町にあります。
この町は、もともとあった町ではなくアンコール遺跡群が発見されてから、観光客が激増して観光客相手の商売をする人たちによってできた、いわばアンコール観光のための町といってもいい存在です。
日本からは直行便がないためタイやベトナムを経由していくことになります。
アンコールは9世紀から16世紀ごろまでこの地域を治めたクメール王朝の王宮、寺院群です。
アンコールは、タイのアユタヤ王朝によって滅ぼされ、その後王宮群はジャングルに覆われてしまいましたが、それでも信仰の対象として広く知られていました。
19世紀に入ってフランス人によって世界的に紹介されてから現在に至るまで各国が修復復元に協力しています。
非常に有名なアンコールワットやアンコールトムの他にもさまざまな建造物があり、今もってジャングルから新しい遺跡が発見されつつあります。
アジアの一大古代都市がジャングルに埋もれていたわけですから、有名無名の建物があっても不思議ではありません。
アンコールワット
アンコール遺跡群の中でも際立って有名な遺跡がアンコールワットです。
この遺跡はカンボジアに誇りともいうべき存在で、国旗にも大きくデザインされています。
アンコールワットは寺院ではありますが、建物の構造は要塞、城ともいうべきもので、周囲には堀がめぐらされ、建物自体は城壁に囲まれています。
城壁の中の建造物は高くその上からアンコールを見渡すことができます。
アンコールワットの要塞の機能も持つ構造がクメールルージュに利用され、貴重な遺跡は彼らに破壊されるという災難がありました。
現在は徐々に修復されています。
内部の回廊には、精緻な壁画が彫刻されています。
壁画の内容は主に、カンボジアに伝わる宗教的な伝説物語と数々の女神の像です。
これらの彫刻はミリ単位ともいわれるレベルの細かいもので、現在も保存、修復が行われており、その技術者の養成も行われています。
アンコールトム
アンコールワットに次いで有名な建造物がアンコールトムです。
アンコールトムにもアンコールワットと同じく精緻な彫刻が施されています。
また、巨大な仏頭が四隅の柱に彫刻されたバイヨンや、道の両側に置かれているナーガなど巨大な石像群でも有名です。
アンコールワットが宗教施設的な色彩が強いいのに比べるとアンコールトムは居城としての蛍光が強い建造物です。
アンコール遺跡群は、背景はうっそうとしたジャングルで建造物といえば素朴な石造りですが、その建物の外壁から回廊の壁、一本一本の柱に至るまで、精緻にしてダイナミックな彫刻が施されています。
その様子は、写真を見ても推し量ることができます。
世界中の研究者や技術者がその保存のために力をそそぐのは、アンコールがジャングルに秘められていた質の高い芸術群だからです。